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不破雷蔵
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不破雷蔵夢『あなたの温もり』 一人寝の夜が寂しいと思ったことは、今までに一度もなかった。 道場で生まれ育った私は、寝ている時が一番に無防備なのだと師から教え込まれていたから、寝るときはそれが自部屋であれ外であれ、念入りに危険がないか確認する癖すらあった。 だから、たとえば家族とか、同室の親友とか、他にも仲の良い同性の子や、もしくはたくさんの人たちと雑魚寝の状態ならば、まだ警戒せずに一緒に眠れる。 けれど私より力の強い男の人と、それも同じ布団の中で二人きりで過ごすなんて、理解は出来てもきっと安心することは出来ないだろうと、ずっと思っていたのだ。 愛も恋も、知らずにいたから。 「……、なにを考えてたの?」 ぎゅっ、と後ろから包み込まれて、私は一瞬息の仕方を忘れてしまう。私を全部閉じ込めるように、男の人の身体が私の身体を抱き締める。背中に感じる温かさと、優しく包み込まれる私の手と、そっと耳元で囁かれる言葉に、酔いそうになる。 「起きてたの?」 「うん。君が寝るまでは起きていようと思ってたから」 雷蔵は眠っているとばかり思っていたので、そのことに少しだけ驚いた。 私はずっと寝るか寝ないかのまどろみの中にいたから、それで気づけなかったのかもしれない。 「……ね。なにを考えてたの?」 優しい声。振り向けばきっと、いつもの笑顔が見れるはず。見た人を幸せにするような、温かな笑顔。私の一番好きな笑顔。 「雷蔵のことだよ」 「僕のこと?」 「そう、雷蔵のこと」 「僕のなにを考えてたの」 「……雷蔵のことが好きだなって、思っただけだよ」 その私の言葉に、雷蔵がほんの一瞬身を固くする。私は少しだけ笑う。雷蔵はこんな仲になってまで、想いを告げると驚いたように真っ赤になる。身体を幾度重ねても、雷蔵自身が何度も私に愛を囁いてくれても、私から告げるといつも照れてしまう。 そんな雷蔵が、私は好きだ。 「僕は、幸せだね。にそう言ってもらえるなら」 「雷蔵は、こんなので幸せになれるの」 「とても」 言葉と共に強く抱き締められて、私はまた息の仕方を忘れそうになる。泣きそうになる。恋しくて恋しくて恋しくて仕方ない。 雷蔵は私の首筋に優しく口付けを落として、後ろから私の頬に手を触れる。男の人の、長い指。雷蔵の指を、私はその上から自分の手で包み込む。 「が好きだよ」 雷蔵の声は、少しだけ震えている。 「君を失いたくないんだ」 縋るように強く、雷蔵は私を抱き締める。 「雷蔵」 私はゆっくりと身体を雷蔵に向ける。雷蔵は少し辛そうな顔で、私の身体を抱き寄せる。 雷蔵の頬に、今度は私が手を伸ばす。雷蔵も、私の頬に手を伸ばす。触れ合う鼻先。すごく近い距離で、雷蔵と目を合わせて。 「私も、雷蔵が好きだよ、すごく」 私はやっぱり泣きそうになる。人を愛することで、愛されることで、どうして泣きそうになるのか分からない。けれど、愛することが、愛されることが、幸福だとも感じてる。 「、僕の傍からいなくならないで」 雷蔵は時折そう口にする。身体を重ねた後や、二人で寄り添い合ってるときや、ふとした瞬間に、まるで縋るように。 信じられていないのだと、不愉快だとは思わない。だって私も不安だから。雷蔵が私から離れて行ってしまわないだろうかと、いつもそれに怯えているから。 「……ずっと私の傍にいて」 だから私もそう囁く。いつだって不安なときは口にする。 ずっと傍にいられるのだと、どうかそう私にも刻み込んで。 「愛してる」 そう囁いたのは雷蔵だったのか、私だったのか、それとも両方だったのか。 愛の言葉が響いた後、私達は唇を重ねた。 |