中在家長次夢
『二度目の鼓動』
十九話
「八日目」
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時間の流れが酷く遅い。先生方がここを出て行ってから二刻は過ぎている気がするけれど、未だ夜が明ける気配もない。 落ち着かなければと思うのに、そう努めようとすると逆に嫌なことばかりが頭に巡る。怖い。長次君のことを思うその度に、捻った右手と切った首が鈍く痛んだ。 「さん、少し出てきますね」 しばらく物音のなかった部屋に、ふいに新野先生の声が響く。頷く私を残して、新野先生は立ち上がり、戸を開けて出て行く。 そのときこの部屋には、幾人かの気配が近付いて来ていた。新野先生となにか話した後、その複数の気配は新野先生の代わりに部屋へと入ってくる。 交代の先生方だとばかり思っていたけれど、違った。五年生の生徒、雷蔵と竹谷の二人だ。 「どうしたの、二人とも」 「新野先生がしばらく医務室に戻られるということなので、代わりに僕達がお側にいます」 「俺らじゃ頼りになんないかもしんないですけど、いざというとき壁くらいにはなれますし。あ、外に兵助もいますし、緊急用の呼び子もちゃんとここに」 「後で、立花先輩と潮江先輩もいらっしゃるそうです」 「潮江先輩に、『もしなにかあったら、俺の分も必ず残しておけよ』って念押しされました」 なにもないほうがいいに決まってますよねー、と竹谷は明るく笑いながら、雷蔵は苦笑しながら、私の前に座ってくれる。 きっと、先生方の手が足りないから来てくれたのだろう。それは理解できるけれど、私と長次君の事情を知っている六年生と雷蔵はともかく、その他の五年生まで駆り出されているとは思わなかった。なにか、それほどまでに大変なことが起こったのだろうか。 「あのね。私、なにがあったか聞いてないの。二人とも知ってる?」 「ああ……えっと、その、先輩を襲った忍者の身元が分かったから、先生方がその身柄確保に行かれたらしいですよ。中在家先輩も、顔を確認するために同行されたって聞きました」 竹谷の言葉に、ぞわ、と背筋に震えが走る。私どころか、長次君だって敵わなかった忍者に? 「そんな……」 「あ、大丈夫ですよ。先生方が何人もついてらっしゃいますし」 息を飲む私に、雷蔵が慌てた様子で口を開く。 「それに、勝算のない戦いを先生方がされるはずありませんから」 「そうです。その間俺等が留守番ってだけですから。きっとすぐ戻ってきますよ」 あっけらかんと、竹谷は私を励ますように笑う。ふと気づいて雷蔵に目を向けると、私の意図を察したのか、雷蔵は小さく頷いてから、竹谷に声をかけた。 「八左ヱ門。今から喋ること、聞かなかったことにしてくれるか」 「分かった」 竹谷はすぐに頷いて、私と雷蔵に背を向ける形で座り直した。雷蔵が私に身を寄せて、安心させるように小さく微笑む。 「八左ヱ門は、詳しいことは知りません。兵助達もです。知っているのは先生方と、先輩が伝えた人だけのはずです。あとはみんな、先輩がなにかの理由で襲われたとしか聞いていません。それも上級生だけですから」 「ん……ありがとう」 気遣ってくれている雷蔵の言葉に、ゆっくりと頷く。だけど申し訳ないけれど、私はもう今となっては、長次君の記憶を失ったことが知れ渡っても構わないと思っていた。 そのことよりも、さっきから心が重いのには別の理由があった。長次君と先生方は無事だろうかと、一体なにが起こったのだろうかと危惧する思いと、そして。 ──どうして私は、長次君を忘れたのだろうか。 今まで幾度も自身に繰り返した問いが、また改めて頭の中に響く。 長次君と先生方は、私がなぜ襲われたのかを知っているのだろうか。それならば、『私がなぜ記憶を失ったのか』も、もう理解しているかもしれない。 「………………」 そうだ。今までとは違う意味で、私はその理由を知るのが怖い。 ただの事故ならばいい。理由が分からなくても構わない。 けれどもし私が、長次君が言っていたように、『長次君を邪魔だと思って』忘れてしまったのならば。……本当にその通りなら、長次君はもう二度と私の傍にはいてくれない。今の私がなんて言おうとも、絶対に私と一緒にはいてくれない。 長次君が愛しているのは、今の私ではなく『前の私』だから。 だから、私はそれを知るのがとても怖い。 「先輩」 声をかけられて、いつの間にか俯いていた顔を上げる。すぐ傍の雷蔵が、戸惑うように私を見ていた。ごめん、と慌てて謝ると、雷蔵は申し訳なさそうに眉を下げる。 「いいえ。お力になれずに、すみません」 「違うの。……その、ごめんね」 また謝ってしまうと、雷蔵は何も言わずに首を横に振る。それから少し躊躇いがちに、口を開く。 「この間、僕は『お二人が一緒にいるほうが好きです』ってお伝えしましたよね。……今もその気持ちは同じです。お二人のことをすごく知ってるわけでもないのに、無責任なことを言っている自覚はあります。でも僕は、そんな先輩の顔を見たくないですし、きっと中在家先輩もそうだと思います」 雷蔵の手がゆっくりと伸びる。私に触れる直前に、はっと気づいたようにその手は慌てて離れた。下級生にするように、頭を撫でようとしてくれたみたいだった。それくらい、私は不安そうな顔をしていたのだろうか。 長次君と一緒にいる私は幸せそうだったと、この間雷蔵は言ってくれた。長次君と一緒にいたいと、そのとき私も決めた。長次君に嫌がられても傍にいて、長次君のことを思い出したい、と。 でも、今は思い出すのがとても怖い。長次君が離れてしまうかもしれないなら、分からないままのほうがずっといい。 記憶を失った理由がなんであれ、長次君が好きで、長次君と一緒にいたいというのは、間違いなく今の私の願いだ。けれど、私の願いと長次君の願いは違う。 「先輩……」 「うん、……大丈夫」 それでも私は長次君が好きだ。そうだ、長次君の部屋に無理矢理押しかけたときだって、思ったはずだ。 私は、今の私の思い通りに生きる。 私は長次君が好きだ。その想いの通りに。 「ありがとう、雷蔵」 礼を言うと、雷蔵は困ったように微笑んで、そして私からそっと離れた。 微かな足音が近付いてくる。急ぎ足で隠しきれない足音が部屋の前で止まった。竹谷がゆっくり立ち上がり、戸を開く。 新野先生が、戻ってこられたみたいだった。 「遅くなってすみませんでした。なにか、変わったことはありましたか?」 新野先生は、両手にたくさんの荷物を抱えていた。救急箱や、水差しや、他にも細々としたものを。 「いえ、特になにもありませんでした。大荷物ですね、新野先生」 「必要なものを持って来るのを忘れていましてね。ああ、不破君、これを適当なところにでも置いてもらえますか?」 「はい、分かりました」 「それから二人とも、ここの警護担当でしたら、まだ部屋にいてもらえますか? 外に他の先生方がいらっしゃるとはいえ、私一人では心許ないんです」 「いやー、俺達だって半人前ですけど」 「二人いれば一人前でしょう? 私よりもずっと頼もしいですよ」 「やめてくださいよ、本気にしちゃいますよ」 困ったような嬉しそうな顔で笑う竹谷に、笑顔で頷いて、新野先生は救急箱だけを抱えて部屋の隅へと腰を下ろした。そして、私に手招きをする。 「さん、こちらに来てもらえますか。そろそろ怪我の具合を診ましょう」 「あ、はい」 そのために医務室に戻ってくださったのだろうか。頷いて、私は新野先生の元へと足を進める。同時に、雷蔵と竹谷が立ち上がって、戸の両端に位置する。なにかあればすぐに動けるように。新野先生が手を離せないからだろう。 新野先生の手が、幾重にも巻いた私の首と手首の包帯を外し、それぞれ丁寧に薬草や湿布で処置して、また新しい包帯で巻き直してくださる。 優しい新野先生の手つきとその温かさに、私はさっきのことを改めて考え直していた。私はどうして長次君を忘れたのか。新野先生は、それを知ってらっしゃるだろうか。 「新野先生」 「はい? なんでしょうか」 「私は、どうして忘れてしまったんでしょうか」 小さな声だったけれど、たぶん竹谷と雷蔵には聞こえていただろう。けれど二人はなんの反応もしなかったし、新野先生も治療の手を止めなかった。 少しの間を置いて、新野先生の口が開く。私と同じ、抑えられた小さな声。 「……記憶の喪失は、外部からの衝撃による一時的な混乱で引き起こされる場合と、心因的なものの二種類があります。あなたの場合は、おそらく後者でしょう」 「心因的、ですか」 「そうです。心因的なものは、自己防衛が理由になることが多いです。残虐な場面を見てしまったとき、見ていないと仮定しなければ精神が保てないときなどに働く機能です。記憶を操作し、脳が『なかったこと』に改竄します」 手首に、湿布薬が巻かれた。じん、とまだ動かすたびに鈍く痛む。圧倒的な、玄人忍者の力。私は、やっぱりそれに屈してしまったのだろうか。 「……私は、自分を守るために、あのひとのことを忘れたのでしょうか」 「私は専門医ではありません。あなたがどう考えたかは、私含めて誰にも分かりません。ですがきっと、その意味があったからこそ、あなたはそうしたのでしょう」 意味。その意味って、なんだろう。 「きっとそのときあなたは、あなたにとって大切なものを守りたかったんだと、私はそう思いますよ」 堺に着いたそのとき、夜の帳はまだ下りたままだった。しんと張り詰めた、朝が近い空気の中。福富屋の直前で馬を下り、徒歩でその裏口へと向かった。 貿易商という商売は、店が開いていなくとも船があれば仕事があるのだろう。陽が昇っていない今も、ざわざわとたくさんの職人や奉公人達の気配があった。 出迎えた福富屋の主人も、起き抜けではなくすでにきちんとした身なりと姿勢だった。俺と先生を見て、驚いた表情になる。 「おや……こんな早朝から私に客人とは何事かと思いましたが、学園の先生と中在家君ですか。いかがなさいました? しんべヱでしたら、ご存じの通り手前共の家に戻ってきておりますが、起こして参りましょうか」 「いえ、しんべヱを呼ぶ必要はありません。福富さん、少しお話が。あなたの息子さんに関わることではありません」 「火急の用事ですかな。一体……」 ただ事ではない空気を察したのか、しんべヱの父、福富屋の主人も怪訝そうに眉をひそめる。俺と共に裏口へ赴いた日向先生は、辺りに怪しい気配がないかざっと目を配って確認した後、手短かにこれまでの話を伝えた。 他の先生方は、こちらの動きに気づいて逃げられることのないように、すでに福富屋全体を見張っている。を襲った忍者を見つけ出し、拘束出来れば、それで終わる。 「……お話はよく分かりました。では、こちらへ」 日向先生の話を一通り聞き終えると、福富屋の主人はすぐに頷いて裏口を出た。店員達が店を開く準備をしている間を通り抜け、海へ……港へと向かう。 目立たぬよう、少し離れてその後に続く。それを察しているのか、俺と日向先生を振り向きもせず、福富屋の主人は歩きながら口を開く。かろうじて聞こえる、独り言のような声。 「この店も、お陰様で大きくなりましてな。大部分は私だけでは手が回らず、信用のおける者達に任せております。ですから私が把握している範囲は全てではありませんが、……それでもこの店の主人は私ですからな。二、三、思い当たることもございます」 潮の匂いが強くなる。福富屋の管理する港が、目前に広がっていた。大きな南蛮船と、それとやり取りをするためのものだろう、幾つもの小舟。護衛用の水軍のものらしい早舟も、数隻視界に映った。 荷の上げ下ろしを行っているらしく、帆を畳んだ南蛮船に、輸出品や食料だろう大量の荷物を次々に運び込んでいる。たくさんの水夫達や、荷物の数量や中身を確認する奉公人、そして皆に朝食を配って歩く丁稚まで、周辺はかなり騒がしかった。 「おや、大旦那様。こんな朝早くからご苦労様です。もしや、抜き打ちの視察ですかな?」 その中に入るまでもなく、水夫の頭らしき中年の男がこちらに気づいて駆け寄ってきた。周りの水夫達も、「大旦那様、おはようございます」「おはようございます!」と次々に挨拶の声を上げる。よいよい、と彼らの主人が手を振ると、こういったことは珍しくないのだろう、特に気にする様子もなく、皆仕事に戻って行った。 「いやいや、たまには皆の仕事っぷりを見せてもらおうと思ってな。そう堅苦しくせんでもいい。積み込みは順調に進んでおるか?」 「はい、旦那様。出発予定の前日までには完璧に終わらせます。今回はなかなか大仕事でしたから、最後まで気を抜かぬよう、皆に発破をかけておきますよ」 「そうかそうか。万一にも事故のないように頼んだぞ。……して、このところ飼っている鯉達の様子はどうかの? 去年譲った稚魚は、随分大きくなったのではないか?」 「旦那様に頂いた、因幡の血が混じっとるやつですな。いやあ、特に背に黒い模様のあるやつがとても元気でしてな、まだ若いからか、よく泳ぎます」 「もうすぐ品評会の報せが来るが、今年は一緒にどうだ? ほれ、赤色に金筋の見事なやつがおったじゃろ」 「ああ、それは残念です。あの赤いの、この間斑点が出来る病をもらってきまして、今は塩水の桶で休ませとるんですよ」 笑顔で会話を交わす二人にはなんの違和感もないが、おそらくそれは綿密に取り決められた隠語なのだろう。商売人達は、忍びのそれと同じほどに駆け引きが巧みだ。 ふいに、なにかを察したのか、日向先生が視線で俺にもっと下がれと伝えた。指示に従って、福富屋の主人と水夫の頭、どちらもがよく見える位置に姿を隠す。 「そうかそうか。飯はよいものを食べさせてやるのじゃぞ」 「最近じゃあ、女房が俺よりもいい飯を与えてますよ。あんたより鯉のほうが喋らないから可愛い、とかなんとか。……ああ旦那様、そういえばこの間入った新顔達をまだ挨拶させてませんでしたな。今お目通りさせても構いませんか?」 「構わんぞ。皆にはよく働いてもらわねばならんからな」 「大旦那様からお言葉を頂ければ、気合が入りますからな。……おーい! 全員ちょっと手ぇ止めろ! 大旦那様とまだ顔合わせてない奴呼んできてくれ!」 水夫の頭がよく通る大きな声を上げると、あちこちで人の名前を呼ぶ声が響く。──来る。身を固くした瞬間、ふっと俺の後ろから前へと薄い気配が幾つも流れた。一瞬しか気配を察知できなかったが、先生方だ。 「ちょっと待ってくださいよ、大旦那様にお目通りなんて、緊張しちまうじゃねぇですか。髪直しに厠行ってもいいですか?」 「あほ、お待たせするほうが失礼だ。お前が寝癖だらけなのは今に始まったことじゃねえだろ」 「あの、俺をお呼びだって聞いたんですけど、なんでしょう?」 「あー、やべ、俺今すげえワカメくさい」 「どうせ全員潮くせーだろ。ほらさっさと行ってこい、大旦那様に粗相のないようにな」 「おう、こっちだこっちだ。全員いるか? 一、二、三……よし」 新顔らしいまだ若い水夫達が、先達に連れられて三人、福富屋の主人の前に現われる。 「長次、分かるな?」 いつの間にか、俺の隣に木下先生が立っていた。無言のまま、肯定を意味する矢羽音を飛ばした。 三人の若い男達。そのうちの一人には、額に塞がりきらない傷があった。水夫という職は重労働だから、周りで忙しなく働く男達の手足にも、古傷や包帯が目立つ。そのため、その男の傷だけが異様だということはないが、 ──ふいに。その目が、俺を捕らえた。 蘇る。が襲われていることに気づき、考えるよりも先に部屋に飛び込んだ、あのとき。ほんの一瞬切り結んだ、賊の殺気と鋭い視線。きっと今までに幾人もその手で殺めたのだろう手練れの忍者の額には、鋭い暗器で負ったような深い傷があった。 今ならば分かる。男の顔には見覚えがあった。請われて福富屋の敷居を跨いだ際、幾度か顔を合わせたことがある。船で南蛮図書の選定をしている俺に、細かに世話を焼いてくれた。 男は、俺の顔を見てもほとんど表情を動かさなかった。状況を確認するように二度ほどゆっくりと瞬きを繰り返し、そして俺と視線を合わせたそのまま、素早く右手を腰元へと伸ばす。 ぞわり、と覚えのある鋭い殺気が漏れたその瞬間、一斉にあちこちの気配が動いた。一瞬で駆けた先生方が、男の取り出そうとした暗器を叩き落とし、地面へと組み伏せる。突然の出来事にざわりと揺れる周囲で、ただ福富屋の主人と年長の者達だけが、慣れたことのように無言でその様子を見つめていた。 「いらっしゃい、中在家君」 山本先生の声に、幾人もの先生に組み伏せられた男へと足を進める。自害せぬようにだろう、男の口には布が宛がわれていた。その前で、足を止める。 見下ろし、見上げられて、視線がまた交わった。諦めた様子も、開き直った様子も、足掻こうとする様子も、その忍びからは見られなかった。ただじっと、冷静に俺を見つめている。最期まで忍務を遂行しようとする、感情のない忍びの姿だ。 体の奥底から、抑えていた怒りが湧き上がる。を利用し、殺めようとした。が記憶を失い、苦しんだのも、全てはこの男のせいだ。の負った傷も、学園を混乱に陥れたのも、なにもかも。 この男さえいなければ。この男さえ──! 「中在家君、口にしなさい。さんを襲ったのは、この男?」 息を吐く。 膨れ上がりそうになった殺意をなんとか押しとどめ、固く握りしめていた拳をゆっくりと開く。 を傷つけた男を見下ろしながら、口を開いた。 数刻前、タソガレドキの忍者隊組頭が、伊作に説いていた言葉が頭を過ぎる。伊作の甘さと優しさを忠告していたのだろうそれは、そのまま俺の未熟さにも当てはまるものだ。 学園を卒業すれば、忍びになるのだと当然のように思っていた。自分がこの職に向いていないのではないかと悩んだことはないし、そう他人から言われたこともない。忍びの道の残酷さも厳しさも、無論自分が未熟であることも、充分に承知しているつもりだった。 けれど、大切なものを失うかもしれないそのとき、俺はそれでも忍びでいられるのだろうか。 。 全てを話したら、お前はそのきっかけとなった俺を恨むだろうか。それとも、忍びを目指すならば仕方のないことだと思うのだろうか。 お前にとっての最善がなんなのか、今の俺には分からない。 危険な目に遭わせたくないと、お前が笑顔でいられるようにと、ただそれだけを望んでいたというのに。 長く海に沈んでいた陽が、ゆっくりと昇る。 空と海、どらもが光を帯び、瞬く間に朝の色へと染まっていく。 男を連れて行く先生方の後に続きながら、は今なにを考えているのだろうかと、陽の光を見てそう思った。 →二十話「九日目」 |