ホワイトデー企画鉢屋三郎夢オマケその2
※裏創作
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※ホワイトデー企画鉢屋三郎夢の途中からの分岐です。未読の方はそちらを先にどうぞ。 「」 口付けの合間、呼吸の隙に呼ばれた名前。その声に返したいのに、私はほとんど身体を動かせなくて、ただ三郎の唇と舌と、体温と匂いだけを感じてる。 ゆっくり目を開けると、目を細めた三郎のそれとぶつかった。切なそうな三郎の瞳に、月のものの痛みみたいに下腹が締め付けられる。理由の分からない涙が滲んで、頬にそのまま滑り落ちた。 激しかった三郎の舌の動きが、少しずつ優しいものになる。三郎はゆっくり私の舌を離して、互いの唾液で濡れた私の唇を啄ばむように吸った。表面を舌で舐められ、吸われるのを繰り返されて、唇が腫れたみたいにじんじんする。 最後に強く唇を押し付けて、三郎は私から少し身を引いた。ついさっきまで全身を包んでいた熱さが、離れていく。 三郎の手が涙を拭うように私の頬を撫でて、ずっと触れてくれていた唇が、小さく動く。 「……ごめん」 ──咄嗟に手を伸ばして、三郎の頬を掴んで引き寄せた。 さっきと同じ、唇の感触。三郎が息を飲むのが分かる。三郎が私にしてくれたみたいに、舌で舐めて吸うのを繰り返す。震えている。私の手も舌も。それでも突き動かされる、名前の分からない感情のままに、私は必死で三郎がくれたものを返そうとした。 「さぶろ……」 唇同士が触れ合ったままの、くぐもった声。名前を呼びたい。でも口付けもしたい。自分がなにを考えているのかよく分からないけど、求めているものは分かる。 三郎、三郎、三郎。 舌先を軽く絡めながら、呼び続ける。なにを伝えたいのか自分でも分からないままに、ただこのまま離れてしまうのが嫌で、目の前の三郎にすがり続けた。 私の瞳から、また理由の分からない涙が頬を伝って落ちていく。三郎の腕がぎゅっと私を抱き締める。強く唇を押し付けられて、さっきみたいにあっという間に三郎の動きに飲み込まれた。荒々しく口の中に入ってくる舌に、私はすごく安心する。三郎の背に手を回して、今度は私からもその舌に吸い付いた。 身体と頭が、全部熱に呑み込まれてる。ただ三郎が触れるところだけに神経が走ってるみたいに、三郎だけを意識してる。 深く繋がり合う舌。私をじっと見ている三郎の瞳が、まるで睨むみたいに鋭さを増した。でも全然怖くない。三郎の瞳の奥にあるものは、熱だけだ。きっと私と一緒。 肩を掴まれて、身を引かれる。唇を重ねたまま、もたれていた塀から離される。三郎に身を預けると、三郎は私の舌をお互いの口の中で混じり合った唾液ごと強く吸い上げて飲み込んで、口付けを解く。名を呼ぼうとしたのに、間を置かずに腰に腕を回されて、抱き締められた。息が詰まるほどの強い力。口付けのせいで荒い呼吸。くらくらと酔ったような頭。火照った身体は熱が引かず、三郎に触れているだけなのにその熱がまた上がる気がした。 「」 耳元で囁かれた名前に、ぞくりと痺れるような震えが走った。いつもと違う、余裕のない三郎の声。私も名前を呼びたくて口を開こうとしたとき、三郎の言葉が続けられる。 「ごめんな」 ……え? 言われた意味が分からなくて問いかけようとしたとき、耳に届く、僅かな衣擦れの音。腰帯を解かれたのだと気づいたときには、三郎の手が上衣と中着の下、素肌の上に滑り込む。背をゆっくり撫でていくその手に、私はようやくに少し頭が冷える。 「……さ、三郎、なに……、っ」 「前から言ってただろ、お前は危機感薄いんだよ」 「なに言って……や、三郎、……は、なしてっ」 自分の手では届きにくい背骨の一つ一つをなぞるように指を這わせられて、強い羞恥に頭が染まる。思わず目を閉じると、むしろその指の感触がしっかり理解出来て、冷えたはずの頭に血が上る。 「あほ。これで離せる奴がいたら尊敬してやるよ」 耳元に囁かれる声は鋭くない、むしろ優しいものだった。いつもの三郎の声に近い。でも自嘲の色が濃い。わからない。熱と一緒に戸惑いが身体全体に広がって、それでますます三郎の手を意識してしまう。 背に触れる三郎の手が、私の頭にまで伸びる。うなじを撫でられた瞬間に、首筋に強く吸い付かれた。びく、と反射的に肩が跳ねる。同時に鋭く吐息が漏れて、身体の奥が熱くなる。 私はこのとき本当にようやく、三郎の熱、そして私自身の熱の意味をはっきりと理解した。 ああ、この熱はきっと、 ──肉欲、というのだ。 それに気づいた途端に、動けなくなった。背をまさぐる三郎の手が私よりもずっと熱くて大きくて、その感触に小さく震える。思考すら固まってしまって、なにを考えていいのかも分からなくなる。 私の首筋と耳元にゆっくり口付けを落とす三郎が、「なぁ」と囁く。 「たぶん俺、お前が泣いても怯えても逃がしてやれないからさ」 だから。 「やめて欲しかったら、『お前なんか大嫌いだ』って叫べ」 その言葉と共に、乱暴な動きで草の上に押し倒された。 噛み付くような荒々しい口付け。苦しくて咄嗟に三郎の肩を掴んでも、三郎は力を緩めてくれなかった。咀嚼するような三郎の舌の動きに、本当に食べられてしまう気がする。 ……言えるわけがないのに。嫌いなんて、口に出来るはずがないのに。 口付けを受けながら、私は三郎の瞳を見上げる。 途端に視界が緩くぶれる。涙が滲んで、また頬に流れていく。この涙の意味も今は分かる。私は三郎に愛されたいのだ。三郎の大切なものになりたい。 もしかしたら私は、強く拒むべきだったのかもしれない。私じゃない、三郎のために。でも出来なかった。私には、恥ずかしいということ以外に、三郎を拒む理由が一つもなかった。早急な手つきで上衣の合わせを開かれて、脱がされて、背に回されていた三郎の手が中着の下から腹に触れて、胸元に伸ばされても。 これから三郎に与えられるだろうもっと深い熱を思うと、どうしても拒絶出来なかった。違う。……拒絶したくなかった。 三郎の唇が私のそれから離れて、鎖骨に落ちる。舐められて吸われて、ひきつるような僅かな痛みが走る。激しかった口付けのせいで私は息を整えることに精一杯で、三郎の動きにどう合わせればいいのか分からない。 三郎の手が中着の下で動いて腹をなぞり、胸の膨らみを掴む。痛みや嫌悪はないけど、他人の温度がそこに触れている初めての感触に驚いて、思わず強く目を閉じた。形を確認するように揉み込まれる指の動きに、頭が羞恥で染まる。 綺麗な身体じゃない。自信なんかあるはずがない。お前は色気がないって三郎はよく言ってたし、私自身もそう思ってる。そのことが今更に少し悲しい。もしも私が三郎をもっと早く好きになって相応の努力をしていたら、私は今よりも女らしくなれたのだろうか。三郎が望んでくれるくらいに。 胸に触れているのとは反対の三郎の手が、私の剥き出しの二の腕を撫でる。落ち着かせるような所作に、止めどなく涙がこぼれ落ちる。私はどうすればいいの、三郎。三郎はなにが欲しいの。 三郎の唇が胸元に下りて、中着の上からもう一つの膨らみに触れる。軽く舐めるように愛撫されて、身体が小さく震えた。それは布越しの感触なのに刺激が大きくて、されている、という事実だけで恥ずかしくて仕方なかった。 私は羞恥のせいで目が開けられず、三郎がなにをしているのかを自分の肌でしか感じられなかった。長い指が私の胸に触れて、ぎゅっと掴んだと思ったら優しく撫でられて、中着越しに舐められて、吸われて、甘噛みされて、……すごく恥ずかしいのに、お腹と背中が疼くように痺れが走る。 、と三郎が私を呼ぶ。でも恥ずかしいから返せないし目も開けられない。せめてと腕を伸ばして三郎の、見た目は雷蔵のかもしれないけど、それでも確かに三郎の頭に触れて軽くその髪を梳くと、三郎が身を起こす気配がした。頭に触れていた腕を離されてゆっくり目を開けると、三郎が身を起こして自分の上衣を脱いでいた。それを手にすると、三郎は私の顔を覗き込むように覆い被さる。また恥ずかしくて目を閉じると、身体に腕を回されて、軽く腰を浮かせられた。慌てて三郎にしがみつくと、またゆっくり身体を下ろされる。 背から腰元まで、さっきまではなかった軽い違和感。地面じゃない感触に、上衣を敷いてくれたのかと気づいて、思わず反射的にまた目を開いた。その瞬間、息を呑む。三郎がじっと私を見ていた。すごく近い距離で。 三郎は私の額に手を当てて、頭を撫でるように軽く前髪をかき上げる。どうしたらいいのか分からなくて、咄嗟に視線を逸らした。けれどそれを追いかけて、三郎が私を覗き込む。たぶん真っ赤になっているだろう私の顔をしばらく見てから、ぽつりと言った。 「叫ばないのか」 「…………え?」 「大嫌いだって言えよ」 三郎の顔が少し歪む。だけどそれがなんの意味を持ってるのか分からない。 「言わないなら本気で抱くぞ」 頬に、額に、鼻先に、こめかみに、目尻に、顎に、耳に。三郎の優しい口付けが落ちる。いいから抱いてと口に出来さえすればよかったのかもしれない。でも私は恥ずかしくて、本当に恥ずかしくて、ただ否定しないことでしか三郎の言葉に答えられなかった。 ふうん、と落ちる三郎の呟きがどこか諦めたような冷たいもので、不安に思って三郎を見上げる。三郎はそのときすでに私を見ていなくて、突然に私の腹に腕を伸ばして、中着を乱暴にたくし上げる。 羞恥に身を捩って逃げようとするのを強い動きで押さえつけられて、剥き出しの胸の膨らみに噛み付くように口付けを落とされる。同じように手で揉み込まれる動きもさっきよりずっと強くて、痛みと湧き上がる熱に声が漏れる。泣き声に近いそれはたぶん喘ぎで、恥ずかしくて死にそうになる。 「っや……、三郎……っ」 突然の激しい動きに翻弄されて、わけが分からなくなってくる。胸の愛撫を続けながら三郎の手が股の間に滑り込んで、袴越しに少し強くあの場所を撫でられて、背筋から頭まで響くくらいの刺激が走る。身体がどんどん熱くなる。ぐるぐるぐるぐる、頭の中に痺れが渦巻く。三郎に全部支配されたみたいに、指一本動かすのすら辛い。 私が正気をたもっていられたのは、どこまでだったのだろう。 袴を脱がされたのも、太ももに触れられていたのも、胸元から腹まで口付けを落とされていたのも分かっていた。 けれど三郎の指がゆっくり中に入ってきたとき、さすがに堪えきれずに小さな悲鳴のような声が漏れた。痛みはなかったけど、強い異物感に身体が勝手に震え出した。痛くなかった。それはきっと三郎が優しくしてくれたからなんだろう。でももう私は上手くものを考えることすら出来なくて、抜き差しされる三郎の指に、思考の全部を持って行かれた。 「……っ、う……、さぶろ……」 「痛いか」 「い、……いたく、はない、けど……」 ぐるりと中から内壁を押される。圧迫感が酷くなって、お腹がごろごろした。指を増やされたのだと気づいたのは大分経ってからで、三郎が身体を起こして私の肩を抱いてくれても、その異物感はなくならなかった。かき回され続ける指の動きに耐えようと、必死で三郎にすがりつく。なだめるように私の背を撫でてくれる三郎の吐息が荒くて、それが肩口に触れる度に涙が出そうになった。 時間にして長かったのか短かったのか分からないけど、中から指が引き抜かれた途端に、粘着質な水音が響く。ぬるりと太ももを伝うそれが示すことに気づいて、私は肩で息をしながら、自分が反応していたことを知る。慣れないことばかりできもちいいとはあまり思わなかったけど、それでも私は三郎が欲しいんだろう。きっと、すごく。 肩を抱いていた三郎の腕が離されて、覆い被さるように組み敷かれる。膝を曲げられて両足を開かされて、私はただ全部を任せたまま、ぼうっと三郎を見上げていた。 ──三郎はきっと、今までにたくさん女の子を抱いてきたんだろう。 恥ずかしくてなにも出来ない私とは違う、慣れた手つきにそう思う。 みんな少なくとも私より女らしい子だったはずだ。身体だって顔だって魅力的で、三郎が欲しいものをすぐ差し出せるような、そんな。 その子達と比べられているのかと思うと、酷く悲しい。私の身体は女らしくなくて、可愛くもなくて、その上甘えてみせることすら出来ない。 いくらあの口付けで欲情したからって、三郎は私なんかを抱いて満足出来るのだろうか。 涙はひっきりなしにこぼれ落ちて、三郎の顔がよく見えなかった。手の甲で拭って三郎を見上げても、滲む涙にすぐに視界が揺れてしまう。 両足の間、さっきまで三郎の指が入っていた場所に、今度はもっと熱いものが触れる。涙を拭うことを諦めて目を閉じて、手探りで三郎の首に腕を回して引き寄せた。く、と三郎が鋭く息を吐いた瞬間、指とは比較にならないそれが私の中に押し込まれた。 圧倒的な痛みと熱。押し開かれる肉の感触。たまらず強く三郎を抱き締める。 逃げたいと思っているわけじゃないのに、痛みに無意識に腰が引きそうになる。三郎の腕がそれを押さえつけて、ゆっくり、でも動きを止めることなく私の中に埋め込んでいく。 身体がすうっと冷えていく。総毛立つ肌を三郎の手のひらが撫でて、熱が奪われるのを引き止めてくれる。 私のそれとは違って、三郎の身体は酷く熱い。触れるだけの口付けを交わしながら、三郎は私を抱いてくれる。 痛みも異物感も生理的な怯えも、どうでもよかった。その全部を私に与えているのが三郎だと思えば、愛おしくて嬉しくて、そして少し悲しかった。 全部入ったのかそれとも途中なのか、三郎は一度動きを止めて、私の呼吸が落ち着くのを待ってくれた。 痛みに小さく震える私を抱いて、涙の流れ続ける目尻に口付けを落とす。優しい所作なのに、三郎の目は殺気に似た気配に満ちていて、獣みたいにぎらぎらしていた。それが嬉しいと思う私はおかしいのだろうか。 求められたならぜんぶあげる。なにも返してくれなくてもいいから、今だけは私の傍にいて。 三郎の首に回していた手を戻して、手のひらで三郎の頬に触れる。汗ばんだ男の肌。このひとにぜんぶ暴かれているのだと、それが嬉しくて、けれど悲しくて仕方ない。 「三郎」 せめて今このときだけでも、私は錯覚したかった。私の呼ぶ声に、三郎は少し目を細めて、私を抱く手の力を強めた。 「……なんだ」 「名前、呼んでくれる……?」 口にした途端に、三郎が虚を突かれた顔になった。子どもみたいなことを言って、呆れられたかもしれない。不安に染まると共に、じんじんと響く下腹の痛みが上がってくる気がする。黙ったままの三郎に咄嗟にごめんと言いそうになったとき、三郎が私の耳元に顔を寄せる。まるで私にすがるように、強く抱き締めて。 「」 囁かれた声音は掠れていて、まるで泣きそうな声で、今度は私が驚いた。 「」 もう一度、三郎が私の名を呼んでくれる。私の名前。私の、名前。 「」 すごく近くで、三郎の声がする。身体の中に沁みていくみたいに、満ち足りた思いになる。断続的に身体に響く痛みさえ、薄れた気がした。 呼んで。もっと呼んで。今ここにいるのが私だと、どうか覚えていて。他の女の子と比べてくれていい。魅力のない身体に呆れてくれて構わない。 だからせめて、『私』のことを覚えていて。私を抱いたことを忘れないで。 「三郎……」 「……、……っ!」 私を呼んでくれる三郎の声は段々と大きくなって、それと同時に三郎がまた動き出す。ぶり返す痛みとぞわりと体内が蠢くような感覚に、私は必死で三郎にしがみつく。ただただ三郎が繰り返し呼んでくれる私の名前だけに集中して、貫かれる痛みに耐えた。 。。。 頭に響く三郎の声。三郎の動きが強くて、揺さぶられるたびに酷い痛みが走るのに、私はきっと幸せなんだと思った。 三郎の身体がどんどん熱くなっていって、痛む箇所を容赦なく擦り上げる動きに、頭が真っ白になる。痛みと熱と三郎のことで、いっぱいになる。 もうなにも考えたくない。私が三郎に恋をしていることだけ抱えて、あとは全部捨ててしまいたい。 「…………っ」 余裕のない三郎の声音。意識が薄れかける。 いっそこのまま、どこまでも落ちてしまいたい。三郎に全部奪われたままで。 ゆっくり目を閉じようとしたとき、三郎の声が叩きつけられた。 「俺は、お前が!!」 それは泣き声のような怒号で。 「お前のことが、好きなんだよ!!!」 どうしようもないつづき。 |