ホワイトデー企画久々知兵助夢オマケ


※裏創作



※ホワイトデー企画久々知兵助夢の途中からの分岐です。未読の方はそちらを先にどうぞ。








「ありがとう」

 囁かれた瞬間に、俺の唇にのそれが重なった。は、ん、と小さく声音を漏らしながら、ゆっくり唇を押し付ける。その圧倒的な柔らかさに、ぞくり、と背筋に痺れが走る。
 の腰に腕を回して引き寄せながら、辺りの気配を探る。見られているのかと思うと腹立たしいけれど、もう、いい。
 は俺と唇を重ねたまま、嬉しそうに目を細めて微笑む。それがすごく可愛くて、俺は自分からも強く唇を押し付ける。は拒絶せずに、受け止めてくれる。
 口付けを交わしながら、の身体を抱き締める。華奢な柔らかさと唇の感触に、頭が溶かされそうになる。もうそのことしか考えられない。可愛い。すごく可愛い。……可愛すぎて、おかしくなりそうなくらいに。
 本当なら重ねるだけでいいはずなのに、どちらからかお互いの唇を柔く吸い始めて、じんと痺れる感覚が走る。それが気持ち良くて、咄嗟に舌をねじ込んでしまいそうになるのを必死で堪えた。そこを越えたら歯止めがつかなくなるだろうと、自分でも分かっていたから。
 の手が俺の頬に伸びて、優しく撫でられる。包み込むような、柔らかな感触が心地良い。素肌と素肌の接触がこんなにも満ち足りるものだとは思わなかった。が、好きだ。すごく。

 ……でも、これ以上は出来ない。

 そろそろ離れなければと思ったとき、が頬に触れていた手をそのまま俺の首に回して、逆に引き寄せた。ますます強く重なる唇同士に、かっと身体が熱くなる。
 まずい。
 このままだと絶対に不埒なことを考えるし、その上絶対に理性が負ける。は人と一緒にいるのが好きらしく誰にでもよく抱きついているから、他人の体温が嫌いじゃないんだろう。拒絶されないことは嬉しいし、俺だってとこうしているのはすごく幸せだけど、俺も一応男だし、その上この行為はの本意じゃないし。
 だからこのままじゃ駄目だと本当に思うのに、自分の意に反することだからか力任せに振りほどくことも出来ない。から引いてくれるのを待とうかと少し情けないことを考えたとき、の手が俺の肩に触れる。同時に、今までずっと見つめ合ったままだったの瞳が、ぼうっと酒に酔ったような曖昧な色に揺れた。

 それに気を取られていて、反応が遅れた。

 ふいに唇が離れたと思ったら、強く肩を突かれて上体が揺れる。どすんと背と頭の後ろに響く軽い痛みと、すぐに身体の上に乗ってくる柔らかな重み。
 に押し倒されたのだと気づくのに、それから数秒かかった。
 唖然としている間に、の顔が再び近づく。その腕が俺の頭を抱くように回されて、また唇が強く重なる。
 重力のせいかさっきよりもずっと密着する体勢に、動けなくなる。は落ち着く場所を探すように、口付けを交わしながら俺の上で身じろぎする。胸と胸、腹と腹、それから足と足。全身で触れるの体温に、頭に血がのぼって行く。
 ……えっと。なに、この状況。
 ようやくにさっき以上にまずいことに気がついて、慌てての頬を掴んで、少し強引に口付けを解いた。
、ちょっと……待って」
「ん……なに?」
 は相変わらずどこかぼうっとした瞳で、僅かに首を傾げる。二、三瞬いてから、手持ち無沙汰だと言うようにまた唇を落とそうとするから、それも慌てて阻んだ。
「どうしたの……?」
「や、どうしたって言うか、あの」
 口付けを解いたと言っても、まだお互いの顔しか視界に入ってないくらいの近い距離。は俺の再三の拒絶にちょっと不安そうな表情になって、俺の様子を見るように顔を覗き込む。
「……兵助、嫌? 私とするの、きもちわるい?」
 言いながら、はそっと俺の唇に指で触れる。ただそれだけの接触なのに、心地良い。全身で受けるの身体も近い気配も声も視線も、全部好きで仕方ない。くそ、嫌とか気持ち悪いわけあるか。
 本格的に焦ってきた。本音を言えば、俺だってずっとに触れていたい。柔らかくて温かくて気持ちよくて、すごく幸せだ。
 でも。……見られてる。

 見られてる見られてる見られてる、見られてるから、!!!

 もしかして忘れているのだろうかと目で伝えようとしても、には伝わっていないらしく、ただ戸惑う瞳を向けるだけだった。
 直接言わなくちゃいけないかと仕方なしにを引き寄せようとしたとき、がぽつりと、また同じことを問う。
「……嫌? しちゃ駄目……?」
「嫌じゃない。けど、……」
 とにかく見られたままというのがあれだし、そもそもこのままだと確実に理性も負ける。せめて場所を移すとか……ああ駄目だ、それでも絶対理性が負ける。ていうか場所を変えて仕切り直して最初からってそんな、恋人同士でもないくせに出来るわけがない。でも突き放すようなことしたくないし嫌われたくないし、もしが嫌じゃないならずっと触れ合っていたいし、ああでもそれだと理性が負けるしそもそも見られてるし!
 堂々巡りの思考になにも言えないでいると、はまた俺の頭を抱くように腕を回す。鼻先が触れ合う距離にまで顔を近づけて、目を合わせて囁いた。

「私は、兵助ともっとしたい」

 言われた瞬間、かちん、と思考が固まった。はそのまま俺の言葉を少しだけ待ってから、返事がないのを確認してゆっくりとまた唇を塞ぐ。再び襲う柔らかな心地良さに、息が詰まるほどの衝撃を感じる。しかも今度はそれだけじゃなくて、唇の上にそっと躊躇いがちな動きで濡れた感触が走る。それがなんなのかと脳が認識する前に、反射的に身体が動いた。
 を引き寄せてますます唇の重なりを強くすると、そのままの口の中に舌をねじ込む。俺の唇に触れていたの舌を押し戻して深く絡めると、びくりとの身体が跳ねた。
「あ……、へ、すけ」
「……、口もっと開けて」
「ん、うん……」
 舌を絡め合いながら言うと、はその通りに口を開いて自分からも俺のそれに舌を絡ませる。唇の表面同士の接触だけでもあんなに気持ちよかったのに、舌と舌の絡みはそれ以上の快感だった。
 生温かな濡れた愛撫に、なにも考えられなくなる。深い口付けのせいで荒いお互いの呼気と濡れた音だけが、身体の内と外から同時に伝わる。が小さく身じろぎするたびに、俺の身体に熱が走った。
 可愛いな、と思う。
 は可愛い。全部可愛い。手の指から足の先まで、髪の毛一本一本に至るまで、漏らす声音も熱に浮かれたような瞳も全部、すごく可愛い。
 遠くから見ていても近くで見ていてもこうして触れ合っていても、いつもそう思う。それだけが頭の中を支配する。
 俺は本当にの全部が可愛くて可愛くて、可愛くて仕方なくて。
 それはつまり、

 ──が欲しい、ということだ。

 舌を絡め合ったそのまま、身体を反転させてを逆に押し倒す。身体が揺れた拍子に一度離れた唇を、お互いに引かれ合うようにまた重ねる。体重が全てかからないように気をつけて組み敷いて、の上に覆い被さる。
 見られてるとか、の本意じゃないとか、その二つはもう頭から消えていた。が気にしないなら見られていても構わないし、が拒絶しないでいてくれるなら、卑怯だと言われてもが欲しかった。がもし一度でも嫌がるそぶりを見せてくれたら、絶対に引ける自信もあるから。

「……、な、に……?」
「抱いてもいいか?」
「ん……」
「嫌なら、言って」
 だから口付けを一度解いてそう言うと、はきょとんとしてから、言葉の意味に気づいて照れたように微笑んだ。「嫌じゃないよ、嬉しい」と紡がれた言葉に、どうしようもなくなる。
 衝動的に、の唇を強引に奪った。それでもは逃げるどころか戸惑う様子すらなく、こっちの動きに合わせようと舌を絡めて吸い付いてくる。
 ……いくらなんでも、こんなのおかしいだろ。夢じゃなかったらなんなんだ。
 俺が望む以上のものを、は言葉や態度で示してくれる。まるで想い合っている恋仲みたいな、求められていると錯覚出来そうな甘いやり取り。
 俺はが好きだ。だからがどう思っていても、拒絶されないところまではが欲しい。俺のものにしたい。
 苦しげなの瞳に気づいてようやくに舌の絡みを解くと、は呼吸を落ち着かせようとしながらも俺の頬や額に唇で触れる。俺もそれを返しながらの腰帯に手を伸ばすと、の手が同じように俺の腰帯に触れる。腰帯をほどいて、上衣を脱いで、それだけで素肌同士の触れる箇所が増えて、心地良さに止まらなくなる。飽きもせずに唇を啄むように吸い合って、手探りでお互いの装束を剥ぎ取った。
 の肌は少し汗ばんでいて、触れる度に小さく震えた。白くて柔らかな女の子の肌に、目に入ったところからすべてに跡を残したい乱暴な気に駆られる。幼子が雪の積もった地面に足跡をつけたいと思うのと同じで、俺が初めてだと主張するような、子どもじみた独占欲。はやっぱりどこもかしこも可愛くて、綺麗で、俺はそれに否応がなしに溺れた。
 一度だけ、俺はともかくが可哀想だからと本気で気配を探ってみたけど、たぶん周囲には誰もいなかった。口付けしたことだけ見届けて帰ったのか、そもそも最初から誰もいなかったのか。どちらにしても気にかかることがなくなって、俺の視線も思考も全部、ますますだけに向いた。
 お互いに一糸纏わぬ姿になって改めて触れ合うと、恥ずかしさも照れもどこかに飛んでしまうほどに心地良くて、すごく幸せだった。はどこに触れようとしても嫌がるそぶりを見せなかったし、俺のほうにも手を伸ばしてくれる。その俺より小さな手に触れられるだけで、満ち足りた思いになった。
「兵助……そこくすぐったい、から」
「……ここ? 苦手?」
「っ! や、ほんとに、駄目だから……っ」
 脇腹にそっと触れただけで、は身を捩って困ったように笑う。仕返すつもりなのか俺にも同じように手を伸ばすけど、俺はに触れられて嬉しいという反応しか持てない。それに気づいたのか残念そうになるのが可愛くて口付けると、はすぐに微笑んで身を寄せた。
 欲を解消するための触れ合いと言うより、お互いの身体を探るようなじゃれ合いだった。の体温に一番近い場所にいられるのがすごく幸せで、が好きで、もうそれ以外のことはなにも考えられなかった。
 きっと拙い愛撫だったと思う。ただ相手が愛おしいと思うだけの、技巧なんてなにもない、触るだけの愛撫。はそれでもずっと微笑んでいてくれたし、俺の目からも行為に酔ってくれているように見えた。
 渦巻く熱をどう逃がせばいいのか分からなくて、望むままにを求めようとして、はそれを受け入れてくれた。終わるまで手を繋いでいて欲しいと請われた以外には、躊躇も抵抗もなにもなかった。すごく当たり前のように受け入れてくれたから、少し不思議に思ったくらいにだ。
 手を繋ぐと、ぎゅっと細い指が握り返してくる。もう片方の手での足を開かせて、を求めるそれを触れさせた。
「兵、助」
「……ん?」
 押し入れようとした瞬間に、が名を呼ぶ。
「兵助」
「……うん」
 もう一度呼ばれた名前に、頷いてその頬に唇を寄せた。はそれから少しの間だけなにも言わずに、じっと俺を見上げている。
 やっぱり嫌なのだろうかと身を引こうとすると、ぎゅっと引き止めるように、手を強く握られる。
「いい、よ」
「なに……?」
「私も兵助としたいから、いいよ」
 その声音はやっぱり躊躇も抵抗もなにもない、それどころか嬉しそうなものだった。
 ああ、許されてる。たぶん女の人がなによりも一番抵抗のあることを、は俺にくれようとしてる。愛おしさにたまらなくなって、「ありがとう」と一言だけ返して、引こうとしていたそれに力を入れた。
「んっ────」
 出来る限りゆっくり、優しい動きで押し込もうとすると、は息を詰まらせて身を強ばらせた。触れる場所も、強い動きで押し返そうとする。
 ……痛い、のか。
 先端を埋め込もうとする動きだけで、の額にぶわりと汗が浮かぶ。もしかして初めてかと思い当たって、驚く以上に嬉しさが募る。
 けれどが苦しむのは嫌で、一度動きを止めての様子を見た。
、痛い?」
 負担になるなら無理にしたくない。そう言おうとしたら、は少し苦しそうな顔で微笑んで、首を横に振る。
「痛くないよ。兵助のだから、大丈夫」
 …………え。
 かあっと、顔に血が集まっていくのが分かる。あまりの言葉に絶句していると、はそれをどう勘違いしたのか、慌てたようにまた首を横に振る。
「ご、ごめん。痛くないのは、嘘だけど。……でも、兵助のだから大丈夫なのはほんとだよ」
 ね、とはいつもみたいに笑って、繋いでいないほうの手で俺の首を引き寄せる。
「だから……いいよ」
「っ…………」
 なにも言えなくて、ただの肩口に顔を埋めて、ゆっくり腰を落とした。たぶんこのままの顔を見ていたら、気遣いなんか出来なくなる。
「あ、……兵助……っう、ん……」
 苦しげな声が耳元をくすぐるのにさえ煽られて、頭も身体も全部が熱で染まっていく。
 と口付けしたときも、舌を絡めたときも、直接その肌に触れたときも、その度にこれ以上の快感も幸せもないと思ったのに、それがまた塗り替えられていく。自分自身が少しずつ包み込まれる感触は途方もなく気持ちよくて、下半身から溶けそうになった。
 乱暴な動きで突き進んでしまいそうになることだけは抑えようとしたけど、きっと上手くは出来なかった。は始終辛そうに息を吐いていたし、全部埋め込んだときも目尻からぼろぼろ涙が零れて頬を伝い、肩口に触れていた俺の顔にまで落ちてきた。
 そのときはもう本当に頭がまともに働かなくて、ただ求めるままにの唇を強引に奪って、深く舌を絡めながら腰を動かした。
 温かな中はの意思とは関係なく奥へと誘い、最奥までたどり着いて抜こうとすると、それを引き止めるように吸い付いてくる。それが強烈な快感で、俺はが嫌だと言えば止められるだろうと思っていた自分を、今更ながらにアホかと思った。こんなに気持ちいいことを、しかも好きな相手に与えられて、簡単に止められるわけがない。
……」
「……〜〜〜っ、んー……」
 擦り上げる動きに強く眉をひそめても、涙を零しても、身体を震わせても、は結局最後まで、痛いとも止めてとも言わなかった。
 本当はすごく痛いに決まってる。それくらいは男の身の俺にだって分かる。俺はこんなにも気持ちよくて仕方ないのに、には酷い痛みしか与えられない。
 それが悔しくて情けないと思うのに、それでも動きを止められない矛盾。
 俺は、が欲しいんだ。
「兵助…………へー、すけ……っ」
 喘ぎのような泣き声が、震えて落ちる。呼ばれたことが、それだけなのに嬉しい。すごく嬉しい。
 ますます強くなる快感に、容赦なく引きずられる。制御出来ない本能に突き動かされて、たった一つ請われて繋いだ手さえ離してしまう。小さなの身体を強く抱き締めて、その身体を揺さぶった。
「ごめ、ん……
「……いいよ。兵助の好きにしていい、から…………、っ……!」
 大きく動いた瞬間、びくり、との身体が跳ねる。その白い喉が小さく震えて、悲鳴にならない吐息が滑り落ちていく。頭が真っ白になりそうな快感の渦の中、俺は今一度、すごく幸せだと強く思った。
「兵助、気持ちいい……?」
「無茶苦茶いい」
 照れも恥もなくそのまま伝えると、は泣きそうに笑う。ごめんな、痛いのに。せめてこれ以上苦痛を与えないようにと、耐えることをせずに快感のままに上り詰めた。
「……、もう出る」
「ん……したかったら、中、出していいよ」
「なに、言ってんだよ……」
 痛いのにそんな冗談言うなよ。咎めようとしたけど、もうそんな余裕さえなかった。と舌を絡めて、近い距離で目を合わせる。すぐに来た限界の直前で引き抜いて、の下腹に擦りつけた。

「────、っ…………!」

 最初に口付けしたときと同じ。
 唇を重ねたままゆっくり微笑むの瞳を見ながら、今までで一番の高みで果てた。






 好き、とどこかでに囁かれた気がした。それも幾度も。

 だけどはっきりとは覚えていないから、きっと行為に溺れていたときの幻だろう。
 まだ痛みが響くのか涙を流しながら身を寄せるを強く抱き締めて、共に横になる。涙だらけのの頬を舌で拭い、唾液か涙か分からなくなるほど唇を吸い合って、達した疲労感が落ち着いてお互いの熱が引くまで、ずっとそうして触れ合っていた。

 ああ、そうだ。
 さっき頭に掠めた幻のの言葉に、俺はようやく思い出す。

 俺はまだ、になにも伝えていない。好きという、たった二文字すらも。



 名を呼ぶと、なに? と微笑むの視線が、愛おしくて仕方ない。
 腕の中に閉じこめるように抱き締めたまま、その耳元で囁いた。









 好きだよ、




























どうしようもないつづき