■ お題SSS(竹谷夢設定) 2011/04/16 (土) 七松先輩と、子どもの話をしたことがある。 「お前は、産むとしたらどんな子が欲しいんだ?」 「どんな子……男の子か女の子かってことですか?」 「そうだな、それとか、どんな性格の子どもがいいのか、とかな!」 私は自分に似た子がたくさん欲しいなーっと七松先輩は楽しそうに笑う。 私もそれを想像して、微笑んだ。ちっさな七松先輩がたくさんいたら、すごくすごく大変だろうけど、とても楽しくて毎日ちっとも飽きないと思う。 「七松先輩は、子どもが好きなんですね」 「大好きだぞ! 子どもはみんな可愛いけど、私の子だったらきっともっともっと可愛いと思うんだ! 親子でいろんなことしたいよな! 魚釣りしたり猪狩ったり鯨捕ったりな!」 「鯨ですか?」 「おお! たくさん子どもがいれば鯨くらい簡単に捕れるぞ! いっぱい飯つくっていっぱい食わして、そんで夜は私と子どもでおっきい布団の上で雑魚寝するんだ。きっと楽しいぞー!」 あとそれとこれとあれも! と七松先輩は未来の自分の子を想っているのか、楽しそうに話し続ける。 私はその言葉を笑顔で聞きながら、けれど胸の奥で言いようのない切なさを感じていた。 七松先輩のその話には、『お嫁さん』の話が出てこない。 子どもの話は出てくるのに。 七松先輩は、たくさんの女の人と付き合ってる。私もその一人でしかないことは、私自身もきちんと認識している。 けれど七松先輩は、そのたくさんの女の人の中から、誰一人として伴侶に選ぶつもりはないのだろうか。 子が出来たと女の人に言われたら、産まれてきた子どもだけを引き取るつもりなのだろうか。 そうありありと思うくらいに、七松先輩の話には『お嫁さん』の影がない。 ずっとそうしようと決めているように。 「七松先輩」 「ん、なんだ」 「先輩のお話しには、お嫁さんが出てきませんが、お一人で子どもを育てるんですか?」 出来る限りさりげなく聞いた。無知な女を装って、含みなんかないように。 七松先輩は、きっと私の言葉にどんな意味があるか分かっているのだと思う。ほんの一瞬だけ顔が強張り、それからすぐに、にかっと先輩らしく笑う。 「や、そんなことないぞ! 子どもも大切だけど、子どもにはお母さんがいなくちゃな! 誰かが、子どもは父親と母親で作り上げるげいじゅつひんだーっていってたしな」 「でも七松先輩のお嫁さんは大変そうですね。ずっとお洗濯とご飯つくってそう」 「あははは、そうだろうなー! でも子どもは汚れて育つもんだぞ!」 「いえ、きっと七松先輩も汚し放題ですよ」 「まったく言い返せないなー!」 七松先輩は、その後も楽しそうに、『子ども』とどんな風に過ごしたいかを語り続ける。 そこにはやっぱり、『お嫁さん』はほとんど出てこなかった。 ──このひとは、だれも娶るつもりがないのだ そんなことはずっと前から知っていたけれど それでも私は、七松先輩を残酷に思う このひとはこうして言い聞かせているのだ 私だけでない、きっと付き合っている全ての女の人に 私はお前を娶るつもりはない、と お題:『明るいヒトデナシ。 』(竹谷夢・固定ヒロイン)(15) お題提供:『Abandon』様 完璧に竹谷夢じゃない。 |
■ お題SSS(雷蔵夢) 2011/04/16 (土) 「雷蔵、これはどこに置いておけばいいかな?」 「あ、えーと……えと、あ、うん、そのへんで」 「使わないなら押し入れに入れておこうか?」 「いやその……えっと、そのへんでいいよ。後で適当に片付けるから」 「じゃあ分かりやすいようにここに置いておくね」 「あー……なんかごめんね……」 「いいよ、分かってたことだから」 たぶん私服が入っているのだろう籠を部屋の隅に下ろし、私はまた部屋の真ん中に戻る。今日は雷蔵の部屋の大掃除の手伝いに来たのだ。もう冬休に入るのに整理が出来ていない雷蔵を助けてやってくれと、同室の三郎に頼まれて。 雷蔵が大雑把なのはよく知っていたけど、なるほど確かに三郎が私に頼んだのも理解出来る。どれを捨てていいか、どれを残しておくか、それだけで時間を取ってしまう雷蔵の性格では、掃除はまったくはかどらない。 「いるものーいらないものー……い、……いらない……もの……?」 小物箱を前にしてうんうん唸りながら頭を抱えている雷蔵を見ながら、私は雷蔵の教科書を整理する。宿題に使うものは家に持ち帰る荷物の中に、そうでないものは部屋に残す。 雷蔵も焦ってはいるらしく、少しずつ部屋は綺麗になっている。きっと今日中には片付くだろう。 「ごめんね、僕のために時間をとらせて。まだ帰る準備が終わってないなら、僕も手伝うから」 「いいよ、もう終わったからね」 「……ごめんね」 「いいってば。部屋の片付けは嫌いじゃないしね」 本当のことだ。それに雷蔵のためということなら、なおさら。 教科書の整理を終えて、次は積まれた忍具類を、雷蔵個人のものと忍術学園備品に分けようとしていたら、ふとまだまだ両手に小物を載せてうんうん悩んでいる雷蔵の、その右手首が視界に映った。いつもは手甲をつけているけれど、今はたぶん授業がないからだろう、素肌。 でもそれだけじゃなくて、そこには飾り紐が結ばれている。地味じゃないけど派手でもない。どちらかといえば質素な、どこにでもありそうな飾り紐。 「…………」 顔が赤くなりそうで慌てて俯いて忍具をガチャガチャと整理しだすと、雷蔵はきょとんと顔を上げて、私に問いかけるような視線を向けた。ぶんぶんぶん、と首を横に振ると、そう?という顔でまた小物の選別に戻る。 一度気づいてしまうと、ちらちらと視界に入る赤色が気になって仕方なかった。いつも付けてくれているのだ、それは知っていたつもりだけど。 目の前にするとやっぱりどきどきして、嬉しくて、でもちょっと恥ずかしい。 赤い飾り紐は、私が雷蔵と恋仲になる前に贈ったものだ。高いものじゃない、どこにでもあるものだったのに、雷蔵はいつも身につけてくれている。 「……いるもの、いらないもの」 雷蔵が困った顔で、選別を続けている。いるもの、いらないもの。いるかもしれないもの? いらないもの、いるもの……。 同じものが巻かれている左足首を一度撫でて、私も作業に戻る。 その赤い紐が、『いらないもの』になりませんように。 私と雷蔵を繋いでくれますように。ずっと。 お題:『大丈夫の宝物。』(雷蔵夢・固定ヒロイン)(15) お題提供:『Abandon』様 あ、飾り紐じゃなくて組紐だった……。 |
■ お題SSS(文次郎夢) 2011/04/16 (土) 少し無造作に手渡されたそれは、とても綺麗な色をしていた。 艶々と光る、銀色の簪。彫られているのは、四季折々の花だった。 華美でもなく、地味すぎることなく、流行を選ばないすっきりとした形。 それが、私が貰った初めての贈り物だった。 どう見てももの凄く高いものだ。一般市民が手に入れられるものじゃない。 なにしろこれは銀細工。京の職人が門外不出としている技法なのだと、どこかで聞いたことさえある。 下世話な話で申し訳ないけど、きっと売れば一年ほどの生活費になるのではないだろうか。 だからこそ、信じられなかった。 「ねぇ、これどこから盗んできたの?」 「人聞き悪いこと言うな、買ってきたんだ」 「でもすごく高かったんじゃないの?」 「そーでもねーよ。京まで足を運べば、他で買う半額以下だ。……なんだ、気に入らないのか」 「まさか。でも、いくらなんでも今こんなのもらえる理由がないなって思って」 「理由なんざ別にどうでもいいだろ。嫌じゃないなら持ってろ」 「……ん、うん」 少し強引に押しつけられて、怖々と箱入りの簪を受け取った。 ゆっくりと目の前のひとを見ると、どうしてだろうか、少し複雑そうな顔をしている。 「……ああ、そっか」 ようやく気づいて、私は簪を見つめ直した。 簪。それは、婚姻を結ぶときに使われるものだ。 だからこれは、もしかしたら。 「私、あなたのものになってもいいの」 「ずっとそうしろっつってんだ、この鈍女が」 頭に手が触れたと思ったら、引き寄せられて肩口に顔を押さえつけられた。 ああ、照れた顔を見せたくないんだ。そう思ったら嬉しかった。 「ありがとう」 しがみついて礼を言うと、おう、と小さな声がする。 「銀細工は、魔除けにもなるらしい」 ようやく聞こえるくらいの、小さな声。 「だから、ずっとお前が持ってろ」 お題:『シルバーアクセサリーの魔力。 』(たぶん文次郎夢)(15) お題提供:『Abandon』様 結構捏造ですごめんなさい。室町の銀事情調べてるだけで半分くらい時間過ぎた。あと魔除けっていってるけどほんとは男除けっぽい。 |
■ お題SSS(仙蔵夢・固定ヒロイン) 2011/04/16 (土) 季節は移ろい、物事はすべてが変化する。 望む変化も、望まぬ変化も平等に。 けれどそれを理解できるほど、私はまだ大人ではなく。 きっとあいつもそうだった。 「あの先輩って、どうしてあんなに僕達のことを嫌ってるんですか」 またあの女にこづかれたかなにかしたのだろう、コブが出来ているらしい頭を痛そうに撫でながら、伝七が口を尖らせる。 「違うね。伝七の要領が悪いんだよ。僕たちは組なんて、あの先輩の姿を見たら一目散に逃げられるようになってるもんねー」 「つまり、それだけ今までにあの先輩の被害に遭ってるってことだろ! 偉そうに言うことじゃないぞ!」 「ま、それはそうかもね。だからお前達い組もすぐ慣れるって」 「慣れたくないよ! どうしてちょっと廊下でぶつかっただけで問答無用で殴られなきゃいけないのさ!」 言い合っている伝七と兵太夫を、藤内が少し戸惑ったようにちらちらと見ている。喜八郎はいつも通りに我関せずと一人で離れたところで作業をしている。 「立花先輩ー、六年生の先輩方ならあの先輩のことどうにか出来ないんですか?」 「残念ながら、出来ないな。あいつには関わるな、というのはお前達以上に私達の暗黙の了解だ」 「そんなー……」 「ほらね、やっぱり逃げるが勝ちなのさ。あの先輩の男嫌いは有名じゃないか」 しょんぼりと伝七が肩を落とし、兵太夫が勝ち誇ったような顔をする。その頭を、手を伸ばして軽く撫でた。きょとんと私を見上げてくる兵太夫に、無理だろうなと思いつつ、口にした。 「あまりあいつのことを嫌わないでやってくれ。あいつもあいつで昔いろいろあったから、ああなってしまったんだ」 「いろいろあったからってひど過ぎますよー」 「立花先輩ー、ほんとになんとかならないんですかー?」 「……そうだな」 『仙蔵、もう私に近づかないで』 あの日。 私に憎々しい視線をぶつけてきた姿は、まるで手負いの山猫のようだった。心身共に傷だらけで、それでも生きようとした結果、すべてを憎んだ少女の姿だ。 私はそのときまで、取り返しのつかないことなどないと思っていた。 喧嘩したならば仲直りすればいい。 なにか壊してしまったのならば直すか、新しいものを作ればいい。 二度と再現出来ないものがあるなどと、まだ知らなかったのだ。 二度と戻れない場所も、二度と戻れない関係も。 二度と戻らない、時間も。 「……私からはなにも言えないな。だがどうかあいつをあまり嫌わないでやってくれ。あいつは、」 あいつは。 自ら望んで、男嫌いになったわけではないのだ。 お題:『タイムマシンが壊れた日。』(仙蔵夢・固定ヒロイン)(15) お題提供:『Abandon』様 |
■ お題SSS自分ルール 2011/04/15 (金) ・お題と相手は書き始める直前にランダムで決める(ランダムソフトで) ・ ・ ・ ・ 気合いがあるときに再開したいです |